宮崎・尾鈴山の固有種、キバナノツキヌキホトトギス 名前の由来も。

植物

10月の中頃は、キバナノツキヌキホトトギスの花の季節。なんとも長い名前である。
かのWikipediaをして、「世界で尾鈴山にのみ自生する固有種である」とやや強調気味に書かしむる、宮崎・尾鈴山を代表する花だ。

ふるさとの 尾鈴の山の かなしさよ 秋もかすみの たなびきて居り (若山牧水「みなかみ」)

「かすみ」は春に立つもの。本当なら秋晴れの空の下に横たわる尾鈴山だが、そんな景色も何かかなしくかすんで感じてしまう。かなしは「愛(かな)し」に通じるという。むしろ、わたる霞に全貌が見えないからこそ、いとしさを誘い郷愁を実感させるのかもしれない。

と、まじめに鑑賞してしまったが、特段なんら悲しみ無きままに、ハイテンションで秋の尾鈴へ突撃。キバナノツキヌキホトトギスを見て来ました。

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キバナノツキヌキホトトギス

黄花の突抜杜鵑草
学名 Tricyrtis perfoliata
ユリ科ホトトギス属の多年草 尾鈴山固有種

 

全草の姿。日当たりの悪い崖の法面に、下に垂れるようにして生える。根元から先頭の葉の先まで60cmほど。先端の方の花から順に咲いて、枯れていく。

 

ちなみにこれは6月終わりに撮影したもの。花がない方が葉の並びはわかりやすい。このように対生して、茎もジグザグとしている。株の長さ自体も短く、葉も小さく、見た目が薄っぺらく感じる。

 

葉が並んでできた床面に、上向きの花がずらっと行列を作っている。

 

花のアップ。柱頭は三裂のちさらに先端が二分裂、雄しべは6、花被片は6。つくりはホトトギスとほぼ同じだ。
黄色い花被片の縁にまばらに赤褐色の斑点。花被片の基部に円を描くように、高密度で赤褐色の斑点。

 

花が枯れると、めしべの基部の子房が膨らむ。

 

子房が膨らんで果実になる。果実は三稜形。小さな熟れていないバナナのようにも見える。

名前の由来=葉を突き抜いている

キバナノツキヌキホトトギス、漢字にすると「黄花の突抜杜鵑草」。突抜(つきぬき)とはすなわち、その茎が葉を貫通しているように見えることによる。

このとおり、まさしく茎が葉を貫通している。最初は単に「ツキヌキホトトギス」と名付けられたとか。(その後、で別の博士が同じ植物に「キバナノツキヌキホトトギス」って命名して、そちらが定着し、こんなに長い名前の現在に至る)

 

こちらは6月終わりに撮影したもの。じゃんじゃん貫いている。

茎から葉が伸びる方向とは反対方向に葉の基部が成長し、茎を超えて反対側に膨らむ(この部分を「耳」と呼ぶこともある)。両耳によって茎は葉に抱かれた状態になる。これが一般的なホトトギスの形態である。
キバナノツキヌキホトトギスは、この両耳がどういうわけだか完全に茎をとりまき合生して、「つきぬき」の状態を作り上げている。

 

ちなみに葉の裏はこんな具合に貫通している。葉の裏はさらっとしていて白い。

 

どんな成長過程なのか、さらにはどんな進化過程を経てきたのか、気になるなあ~。

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