ベニトンボを観察@川南湿原 メスは? ショウジョウトンボとの違いは?

動物

前回の記事では写真1枚ぽっちで通過してしまったベニトンボを、もう少し掘り下げてみようと思う。

前回の記事:天然記念物・川南湿原でトンボを見る。閉園日にご注意を。

もともとは鹿児島以南のトンボで、ひとむかし前(といっても、20年近く前)なら、宮崎で見つかれば新聞に載っちゃうくらい珍しかった(と祖父が言っていた)ベニトンボだが、今や分布域は北へ広がり、四国にも生息しているとか。

実は、写真を撮ったはいいものの、種類がわからなくて図鑑とにらめっこしたトンボがベニトンボの♀だったのだ。勉強せねば。

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ベニトンボ

学名 Trithemis aurora

トンボ科 4月~12月

成熟♂

 成熟♂はほぼ全身が赤紫色になる。やはり紅というより赤紫だろう。複眼や顔面も赤紫。胸部や腹部は、白っぽくくすんでいる(粉をふいている?)ように見える。とくに太陽光の下では色が劣化しているように見える。

 翅脈も赤く染まる。この写真のように角度をつけて見てみると、なおのこと赤みがわかる。翅の基部が橙褐色になるのは、雌雄共通。

翅の基部の斑に隠れてうまく写真が撮れなかったけれど、ベニトンボの胸部側面には黒条が走る。

川南湿原を歩いてまわっていると、複数のショウジョウトンボ♂に執拗に追いかけられ、いじめられている、ひとまわり小さい茶色っぽいトンボがいた。運よく僕の目の前に命からがら降下してとまったので写真が撮れた。

その場では「ショウジョウの♀だろうか」と済ませていたのだが、帰って調べてみると、どうやらベニトンボ♀だったようだ。

♂と同じく、翅の基部に広い橙褐色斑がある。また腹部の褐色味が末端へ行くほど濃く黒っぽくなる。翅はほとんど透明。

腹部の側方に沿うように黒い線が走っているのが特徴。ショウジョウトンボの♀などにはこの黒線がなく、のっぺりと黄色いだけに見える。

 

 特にこの部分。おしりから走ってきた側方の黒線が、少し上へ反りあがって胸の手前で背面へ回り込もうとしている。この模様と翅の基部の橙褐色でほぼベニトンボに確定できる(と思う)。

やはり♀の胸部の側方にも、♂とおなじ黒条の模様が見られる。そもそもその写真が撮れてりゃ、同定に苦労しなかった。

ショウジョウトンボ♂との違い

 こちらがショウジョウトンボ♂だ。ベニトンボが白くかすんでいるような赤紫なのに対して、ショウジョウトンボはそういった白っぽさがないため、より濃い赤にみえる。「青は藍より出でて藍より青し」ではないが、ベニトンボよりも紅色のショウジョウトンボである。「ショウジョウ」とは確か中国の酔っぱらった猿の妖怪の名前だったと思う。酔っぱらってもこうは赤くなるまい。

胸部を見てほしい。黒条がない、シンプルな胸をしている。ここもベニトンボとの区別点だ。翅脈は赤くならないが、基部の橙褐色は似ている。また、体の大きさも一回り大きい。

どっちがベニトンボ?

突然クイズ! 手前と奥、二匹のトンボがいますね。どっちがベニトンボ?

 

……答えは奥。わかっただろうか?

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