白いスミレの中では最も身近に、そしてたくさん見られるニョイスミレ。近縁種や変種は多いけれど、地上茎のある白いスミレを見たらまず疑うべきはこれである。花だけを見るとフモトスミレやコミヤマスミレにも通じるところのある見た目なので、地上茎の有無はちゃんと確認しよう。
ニョイスミレ(ツボスミレ)
如意菫(坪菫)
学名 Viola verecunda
スミレ科スミレ属(ニョイスミレ類)の多年草。地上茎あり。別名のツボスミレの「坪」は庭を意味し、平野部から山地まで広くみられるが、湿った場所をより好む。茎を這わせるように大群落でしげっていることも多い。白い花には唇弁に紫の線条が映える。花はスミレの中でもかなり遅い時期まで咲いている。明るい色の葉は心形(ハート形)をしているが、個体差が大きい。
ニョイスミレの全草
茎が横に這って、そこから立ち上がるように花や葉を伸ばす姿は、初心者が「地上茎」という概念を学ぶのにもってこい。
ニョイスミレの花
ニョイスミレの花はあるていど個体差があることに注意。
小さめの白い花に、紫の模様が唇弁やときに側弁におよぶ。上弁にも紫の線が入ることがある。側弁の基部には毛が生える。
上のものよりさらにつぶれた横長の花。花弁がカールしている。同じスミレとはすぐには思えないかもしれない。
横から見た花弁。距(後方の袋)はちょこんと小さく、あまり伸びない。
花だけ見ると、フモトスミレやコミヤマスミレも似ているので、地上茎の有無はしっかり確認しておきたいところ。これはフモトスミレ。
この2種類とニョイスミレは系統樹的にはわりと離れているはずなのだが、どうしてこうも似通ったデザインになるのか、とてもふしぎだ。なんらかの淘汰圧があって収斂進化してきたのだろうか。
ニョイスミレの茎、葉
地上茎あり。茎はみずみずしい印象で、ある程度育つと赤みを帯びてくる。托葉はあるが、タチツボスミレ類のように櫛状に細く切れ込むことは無い。
葉も個体差が大きい。そして、より珍しいヒメアギスミレなどとの識別は葉の形が重要になってくるので、しっかり押さえたい。
典型的なニョイスミレの葉。深く切れ込んだ心形(ハート形)の明るい緑色の葉。右奥に見える葉のように先がほとんど尖らないものもあり、そういう葉は小さなフキみたいに見える。
心形の葉の基部の切れ込みが深く、ブーメラン状に近い葉。
ヒメアギスミレやアギスミレ(宮崎にはない)は、より顕著に細いブーメラン型となる。
類似種・関連種
フモトスミレ、コミヤマスミレ、シコクスミレいずれにも地上茎が見られる。
コメント